マンション関係判例解説
わがままは許しません
【暴力団事務所が入居してきた場合】
福岡県の指定暴力団は、全国最多の5団体
事務所退去の決め手は、区分所有法「共同の利益に反する行為」
福岡県は、暴力団関係では全国トップレベルにあります。
あなたのマンションに、暴力団関係の組事務所が開設された場合どう対処すればよいか、マンション管理の基本的法律である、建物の区分所有等に関する法律(通常は区分所有法といいます)では、マンション住民である区分所有者の「共同の利益に反する行為」に該当するとして対応することができます。
あわてて騒がず、管理組合でよく話し合い、マンション住民の意思を統一して、粛々と手続きを踏んでいくことが肝要ではないでしょうか。
区分所有法では、手続きを3段階に分けています。
1.組員のマンション内への立ち入り等の停止請求
2.使用禁止の請求
3.区分所有権の競売請求や、使用者が区分所有権者でない場合の占有者に対する引渡し請求
暴力団事務所が開設された福岡市南区の某マンションでは、第2段階の使用禁止の請求(この場合は使用差し止めの仮処分でした)で、裁判所が仮処分を認めると約
1週間で事務所から荷物を運び出したといいます。
区分所有法の義務違反者に対する措置を以下のようにまとめてみました。
1.共同の利益に反する行為の停止等請求 (57条)
停止請求は、他の区分所有者全員が行うことができる。
訴訟を提起するには、集会の決議による。
2.使用禁止の請求(58条)
停止請求等では、その障害を除去して、共同生活の維持を図ることが困難な場合は、集会の特別決議(区分所有者及び区分所有権の各4分の3以上の多数の賛成が必要)で専有部分の使用禁止を請求できる。
3.区分所有権の競売の請求(59条)
使用禁止等の方法では、その障害を除去できない等の場合は、集会の特別決議(区分所有者及び区分所有権の各4分の3以上の多数の賛成が必要)で専有部分の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求できる。
−2.占有者に対する引渡し請求(60条)
区分所有者以外が、当該物件を占有している等の場合は、集会の特別決議(区分所有者及び区分所有権の各4分の3以上の多数の賛成が必要)で専有部分の引渡しを請求できる。
【バルコニーの無断改造の例】
マンション住まいの欠点は増改築が難しいことにあります。
あと一部屋あったら悩みは解決するのに・・・
そこで、目をつけたのがバルコニーやベランダを部屋にする事です。
でも、バルコニーやベランダは、共用部分であり個人の専有部分ではありません。
個人がその用法(ベランダはベランダとして使用すること)に従って専用使用権を有しているだけです。
勝手に改造したり変更したりはできないのです。
この例は、勝手に変更した区分所有者を管理組合が「原状回復の請求」をして認められた裁判です。
バルコニー(ルーフテラス)におけるサンルームの建築は規約違反に当たり、撤去請求は認められる。
〔京都地判 昭和63.6.16〕
事実の槻要
マンションの区分所有者Yが、バルコニー(ルーフテラス)にサンルームを建築し、屋外空調機を専用使用権のない部分に移設したが、管理組合xの管理規約では、バルコニーは共用部分であり、専用使用が認められるものの、バルコニーに構造物等を設置したり、改造等をすることができない旨が定められていたため、xが構築物、屋外空調機の撤去を請求した。
本件では、バルコニーに構築物、屋外空調機を設置することが規約に違反するかどうかが問題になった。
本判決は、Yの行為が規約に違反するとして、請求を認容した。
(判決)は、
「右認定の事実によると、被告らが本件サンルームを設置したルーフテラス部分は、規約上では何ら特別に明示の規定はないものの、専用使用権が認められた共用部分であり、その機能上からはバルコニーと同様の性格を有するもので、規約上はバルコニーの使用と同様の利用制限に服すべさものであると解するのが相当である。
そして、被告らの設置したサンルームが、右認定のとおりの構造である以上、ルーフテラスが非常時に果たす役割の重要性に照らし、本件マンション規約でその設置を禁止された構築物に該当するものであるというべきである。
また、被告らの移設した屋外空調機の設置場所は、被告らに専用使用権が認められていない共用部分であり、非常時において障害物となることは当然予測されるから、これも非常時における重要性に贈らし、本件マンション規約で遵守を義務づけられた目的に従った用法による使用に違反するものというべきである。
被告ら以外にもバルコニー等にブロックを設けて花壇として利用したり、簡易物置を設置したりしている居住者が存在することが認められるものの、それらはいずれも被告らの設置したサンルームと比較して規模も小さく、構造も異なるうえ、他の居住者に違反行為が認められるからといって被告らの正当性を裏付けるものでもなく、他に被告らの正当性を基礎づける事実を認めるに足りる証拠はない。」と判示している。